こんにちは。フランス在住アロマトローグ・自然療法士のTomomiです。
高知・牧野植物園のお話第2弾です。
第一弾のお話はこちらから!
今日は植物の絵についてお話ししたいと思います!
植物観察するなら絵を描こう!
今回、セミナー&ツアーを開催したのですが、「旅のしおり」を作成しました。
1日、五感を意識して植物と遊ぼう!というテーマで、いろいろと書き込みしてもらう設問をつけたのです。
その中に植物をデッサンしてみよう!という項目をつくりました。
案の定「絵なんて描けないんで…」というお声もちらほら(そう言われるのは想定内)。
どうして絵を描かないといけないの?
植物をチェックするんだったら、スマホで写真を取れば1発ですよね。
時間もかからず、細かいところまで正確に写せます。
なのにどうしてアナログに「絵」を描かないといけないのか?
これは私がアートが好きだから言っているわけではないんです。
フランスで植物学を学んだ人なら、デッサンはやらされるのではないでしょうか。結構フツーのことなんですよね。
突然ですが、アロマテラピーを学んだあなたに質問です。
真正ラベンダーの花びらってどんなかたちですか?
真正ラベンダーとラバンジンのかたちの違いは何ですか?
これ、写真をパチリと撮ったり、教科書の写真を見るだけでは、正確に答えられる人はすごく少ないと思います。
でも、絵を描いたことがあれば、かなり正確に答えることができます。
ペパーミントの葉っぱはどんな形?葉脈は?茎に対しての葉っぱのつき方は?
こういう細かいところまで学ぶには、デッサンが一番なんです!
でも私、絵が下手くそです💦
わかります。私も上手ではありません。
私は美大出身なのですが、美大の入試ではデッサンが必須。(私はアーティスト志望ではなく理論の学科でしたが、デッサンが課せられていました!)
美大希望者は多くが「美大予備校」に通います。
そこでやるのはひたすらデッサン。毎日毎日デッサンします。
モチーフをいろいろと変えて、1年間デッサンしまくるのです。
私も最初は「どこから描いていいか…」「どうやって描いていいのか…」と真っ白な紙の前でただただ時間が過ぎていく日々でした。
が、慣れると描けるようになるんです。
例えば今、子供に「馬を描いて!」と言われたら書けますか?
多分「馬そっくりに」描ける人は少ないと思います。
でも、目の前に馬がいたら(馬の写真を見ながらでも)何かしら描けますよね?
デザイナーの主人は馬の顔を正面から描いてさすがと思いましたが、彼は馬について「もう知りつくしていた」から見ないでも描けるのです。
足と胴体のバランスとか、足の関節、首の長さ、尻尾のかたち、目や鼻の位置をひとつひとつ観察すれば、「馬」だと誰もがわかるくらいには把握できます。
あとは、描き慣れていれば立体感とか光沢感なんかも表現できて、2次元の紙の上に3次元の馬がいるようにリアルに描くことができるでしょう。
「絵が上手」は才能ではなく、訓練の賜物です。
そこから芸術性を語り出すと、才能の領域なのではないかなーと私は思うのです。
牧野富太郎は絵がうまい!
前振りが長くなりました。
牧野植物園でぜひ見て欲しいのが、牧野富太郎が描いた植物の絵です。
植物園の中にある展示室で見ることができますよ。
彼、とっても絵が上手。それは科学的な観察眼を持っていたからだと思います。
彼の偉業のひとつが「図鑑」を編纂すること。
彼の時代には写真はまだ一般的じゃなかったので、絵を描いたんですね。
小さい頃から野山を駆け巡り、植物を観察していたので、AとBの植物の違いを事細かにチェックするくせがついていたのでしょう。
私たちみたいに「植物は茎があって葉っぱが枝分かれして、てっぺんに花がさく」くらいの粗い認識だと、どれも同じような植物としか見れません。
でも「この植物は茎の断面が正方形、茎に毛が生えていて、葉っぱはギザギザ、葉脈は網目状で、花びらが6枚、おしべとめしべはこんな感じ」と認識していると、リアルに描けるのです。
実はレオナルド・ダ・ヴィンチも幼少時には野山を駆け巡って自然観察をしていました。だから観察眼を持っていて、誰かに絵を習う前からそこそこうまかったのです。
牧野も誰かに師事したというほどではなかったようですが、上手なのも納得です。
牧野の植物絵画の特徴
牧野は絵が上手でしたが、明治期に創設された今の東京藝大を支えた画家たちとは一線を画する絵です。
つまり、アートじゃないんですね。
あくまで「科学的な絵画」です。
アートな植物画は風景の中に植物を溶け込ませたり、他のモチーフと組み合わせて静物画にしたり。
リアルに見えていながら、近寄ると結構雑だったり。
「植物の姿」が重要なのではなく、絵画のテーマを引き立てるものとして植物を置いた、というものがアートな植物画です。
一方牧野の植物画は、植物辞典のための挿絵、植物をよりよく理解するための絵ですから、植物そのものが最重要。
根っこのかたち、茎や葉のつき方、葉のかたち、花のかたち、花の断面図、果実や種までが1枚の紙に描かれます。
これを見れば森の中で「あ!あの植物だ!」と同定できる特徴を描くのが科学的な植物画。
アート性は必要なく、ただただリアルに正確に、なのです。
この描き方はフランスでも同じ。
写真がない頃の植物図鑑はすべて絵ですから、1枚の紙に植物の一生をすべて描ききるのが特徴のひとつなのです。
牧野のすごいところ
全国を回って植物を見つけては植物標本づくりのための絵を描いた牧野富太郎。
実際に彼の植物画を見ると、ものすごーい細かいんですね。
線がとにかく細い!
ということはものすごく細い筆を使っているのです。
それを、若い時はもちろん、歳を取ってからも描き続けたのがびっくりポイントでした。
普通なら、歳とともに手が震えたり、目が悪くなってあんなに細かい絵は描けないと思うのです。
ちなみに、【花式図】って知っていますか?
牧野の植物画にはこの花式図も描かれていて、私は感動しちゃいました!(上の写真が牧野の【花式図】)
これは、花の花びらの数、がく・花冠・おしべ・めしべなどの数やたがいの位置関係がすぐにわかるように描かれる図です。
私がフィトテラピーを学んでいる時、「この花の花式図を書け」という問題が苦手で苦手で…。
牧野の植物画にこれが描かれていて、「やっぱりこれは大事なんだ!」と思いました。
まあ、日常では全然必要ない知識ですけれどもね。
NHKの朝ドラは、フランスでは見られなかったのでどのように描かれていたかはわからないのですが、自叙伝を読む限り、牧野富太郎という人物はバカがつくほど植物が好きで、植物に身を捧げた人でした。
明治初頭に学歴がなかった彼は順風満帆な植物学者の人生を歩めなかったようですが、でも、学歴がなかったのにここまで歴史に名を残す功績をおさめることができたのは、すごいなーと思います。
寝食も忘れるほど植物が好きだったんですよね。
植物以外の部分は借金などもたくさんあって、いろいろと問題のある人だったとも言われています。
でもそこそこ満遍なくなんでもできることが求められる横並び主義の現代において、ここまでひとつのこと「しか」できないような人=天才が必要なんじゃないかななんて思ってしまいます。
高知県の旅、牧野植物園の後に行った桂浜(坂本龍馬像があります)もそうだったのですが、日本の歴史を変える人物を輩出した高知ってなかなか興味深い場所です!
かつおをはじめ、海の幸も美味しかったし、また機会があったら行きたいな♪
今後もこのようなアロマやハーブに因んだツアーをしていく予定です。
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