こんにちは。フランス在住アロマコローグのTomomiです。
イタリア、フィレンツェ、ルネサンス…。
フランス、グラース、香水革命…。
この2つの国の2つの街でおきた出来事、実は深く関係しているってご存知でしたか?
今日は私の創作物語。歴史的事実からのイマジネーションの世界をお話ししたいと思います。
美術史、歴史、香水史の3つの交差点からの私のレンズを通した眺めだと思ってください。
香りがする絵画『プリマヴェーラ(春)』サンドロ・ボッティチェルリ
この絵画(一番上の写真)、見たことがありますか?
フィレンツェ・ルネサンス最盛期を代表する画家サンドロ・ボッティチェルリの作品です。
フィレンツェのウフィッツィ美術館に収蔵されていて、私も何度か観たことがあります。
何が描かれているか見てみましょう。
人物 : 6人の女性と2人の男性
画面の中央上には弓矢をかまえるキューピッド!
羽の生えた青い男性(ゼフュロス)
彼に捉えられそうになりながら、口から花を出し透けるような白いドレスを着た女性(クローリス)
右側の花柄のドレスを着ているのが「フローラ」(花=フラワーの語源)
中央には赤と青のドレスをまとった女性
左側には透けたドレスで手を取り合い踊る三人の女性(三美神)
その左には剣と兜をつけて赤いマントの青年(マーキュリー)
背景 : たくさんの植物
画面が暗く、退色も進んでいてわかりにくいのですが、研究者によると500種類以上の植物と190種類ほどの様々な花が描かれているといいます。
柑橘、バラ、カーネーションやヒナギク、アネモネ、ムスカリ、アイリス、オレンジ、トウダイグサ、ケシ、ザクロ、マートル、マーガレット、ニオイスミレ、ヤグルマギク、クリスマスローズ、ノボロギク、ワスレナグサ、ジャスミン、オオバコなどなど、たくさんの植物が描かれているのがわかります。
芳香植物で香料原料になっているものもたくさんありますね!
この作品を見ていると、素敵な香水ができそうな予感がしませんか?
ボッティチェルリってだあれ?
この絵を描いたのがサンドロ・ボッティチェルリです。
女性の描き方が独特で私は大好きです!
有名な『プリマヴェーラ』も『ヴィーナスの誕生』もウフィッツィ美術館に行かないとみられませんが、いくつかの作品はルーヴル美術館にもあって、お気に入りなんです。
しかもお住まいはサンタ・マリア・ノヴェッラ地区。
そう、フィレンツェでメディチ家御用達、カトリーヌ・メディシスのための「王妃の水」というオーデコロンを作った歴史的な薬局です。(今も続いていますよ!)
メディチ家の話もさせて
ボッティチェルリが活躍した時代は、フィレンツェやトスカーナ地方を治めたメディチ家がパトロンとして芸術を擁護していたんですね。メディチ家からの依頼でたくさんの素晴らしい芸術が誕生しました。
イタリア語でMediciと書いてメディチと読みます。この綴り、何か見覚えありませんか?
一説にはメディチ家は先祖は薬種問屋か医師であったのではないかと言われているんです。
メディチ家の紋章は赤い丸が配されているのですが、これはお薬の「丸薬」あるいは「吸玉」の象徴ではないか、と。
そんな医療にちなんだ豪族が、その後銀行業で財をなしてフィレンツェ一帯を治めるようになり、さらにフランスとの関係を深めていくんです。
カトリーヌ・メディシスと香水
香水史を紐解くと出てくるこの人物。
メディシスはフランス語読みでして、彼女はメディチ家出身。
ボッティチェルリのパトロンであったロレンツォのひ孫にあたります。
彼女はフランスのアンリ2世に嫁ぎます。
当時のフランスは、隆盛を極めたフィレンツェからしたら「ど田舎」。
アート、音楽、ダンス、バレエ、建築などフランスに「ルネサンス」をもたらします。
もうひとつが香水文化。
彼女が嫁ぐときに調香師を連れてきました。
彼がグラースの芳香植物を使って手袋の香りをつけたことから、グラースは皮なめし産業から香りの街へと変貌を遂げるのです。
アロマコロジー初級では香水の歴史についてじっくりお話しています。
例えばカトリーヌ・ド・メディシスのために作られた『王妃の水』という香水、実際にサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局で買ってきて、歴史の授業でお見せしています。歴史が今も手に取れるってすごいですよね!
フランスでは歴史はとても重きを置かれている学問で、誰もが知っている一般教養になります。
ここでご紹介した作品や人物名などを今度聞いたときに、「あ、あれだ!」と思っていただけたらとても嬉しいです。