こんにちは。フランス在住アロマコローグのTomomiです。
歴史的香水を紐解くシリーズ第5弾は、Christian DiorのEau Sauvageです。
この香水、ご存知ですか??
多分、相当なマニアな方はご存知だと思うのですが、そうではない方は見たことがあってもスルーしているかもしれません。
というのは、男性用香水だからです。
Christian Diorが手掛けた、初の男性用香水ということ有名なのですが、香水好きさんは女性が圧倒的に多いので、知らない人も多いのです。
どんな香水なの?
この香水は1966 年に発売されました。
当時、男性は自分用の香水を持つ人は少なく、オー デ コロンで満足していました。
オーデコロンこそが香水の源流であり、ナポレオンも1ヶ月に何リットルも使用するほど。
香水の歴史の始まりは、男女の使い分けはとくになかったんです。
Diorというメゾン自体が女性用のブランドとしてスタートし、最初のコレクションから「香水をまとって初めて完成する」ファッションを標榜していました。1947年にMiss Diorをリリース。
その後1948年のDiorama、1956年Diorissimoと女性用香水が作られました。
彼もとても有名な調香師なので、香りのメルマガの方でまた解説しようと思います。もしよかったらご登録を!
話を元に戻すと
Christian Diorのメゾン自体が香水とともにデビュー
その後もDiorama、Diorissimoとセンセーショナルな香水を売り出し
メゾン4代目の有名香水が男性用香水のEau Sauvageだったわけです。
ちなみに、先日パリの百貨店のChristian Diorのお店に行き、スタッフの方にいろいろと嗅がせていただきました。
今は買う人が少ないので店頭には出ていないMiss Dior(今出ているのは現代風にアレンジしたもので、1947年のものとは全然違います!)、Diorama、Diorissimoも試香しました!
すごく歴史を感じる香りでしたよー!
誰が作ったの?
Dior専属調香師かのようにDiorの代表的香水を次々と手掛けたエドモン・ルドニツカが作りました。
今でこそフリーの調香師はたくさんいらっしゃいますが、史上初のフリーの調香師だったのでは?
ジャン・カールが粘土を少しずつ形にしていく塑像型だとしたら、ルドニツカはちょうどいい形の石を探してきて削りながら形を掘り当てる彫像型といえます。
わかりにくいかな。カールが「足し算」ルドニツカは「引き算」というイメージです。
どんな香りなの?
その合成香料の誕生が1958年と言われていますので、ルドニツカのDiorの過去2点の作品が世に出たときにも、まだ生まれていなかった香料原料ですね。
トップはラベンダー、ローズマリー、ベルガモット、レモン、バジル、タイム
ミドルはヘディオン(ジャスミンの中に入っている成分の1つ)
ベースはオークモス、ベチバー、パチュリ、ラブダナム、ミルラなど
オーデコロンの伝統を引き継ぎながら、甘さ控えめのシトラスとハーブが鼻腔をくすぐり、だんだんとラベンダーからジャスミンへと移行、最後に野生的なベチバーやオークモスなどがエレガントな男性のたたずまいを与える、という香りです。
イタリア・サンカルロの最高級のカラブリア・ベルガモットはこの香水にだけ使われてるそうです。
Eau Sauvageは古いバージョンと現代バージョンを両方嗅ぎましたが、たしかにルドニツカ・バージョンの方が少し中性的でした。アラン・ドロンがイメージキャラクターだったようです。
ドゥマシー・バージョンは今時の男性という感じ(曖昧ですね)で、お花っぽさがなくセクシーで野性的な香り。ジョニー・デップがキャラクターを務めています。
Eau Savage の影響力
一応男性用香水ということで売り出したのですが、恋人やパートナーの香水を拝借した女性たちが、より女性らしくいられると大絶賛!
折しもウーマンリブ、女性上位時代の到来と重なったので、芯のある女性、男性と対等の女性像として、女性にも人気の香水となりました。
予期せず「ユニセックス香水」の先駆けともなったんですね。
この成功にあやかって、香水業界では「Eau」がつく商品名が溢れました。
そして調香師たちもルドニツカの作品を評価する人が高く、特徴的なヘディオンは今や香水に欠かせない香料として多くの調香師のパレットに組み込まれています!
ぜひ香りを嗅いでみてくださいね!