こんにちは。フランス在住アロマトローグ・自然療法士のTomomiです。
先日「私の自然香水の作り方」をお伝えしました。
香りづくりの作業は
①テーマを解釈する
②イメージを膨らませる
③完成形を思い描く
④精油をチョイスする
⑤精油の配合を決める
⑥④⑤を繰り返して完成させる
こんな順番でやっていますよ、というお話しでしたね!
今回は、クライアントさんから案件をいただいたときに私がどうしているか、というお話をします。
案件をいただく方はすでに独自のやり方が確立していると思うので、これからお仕事をいただきたい!という方向けに書いています。
どうやってお仕事をもらうの?
多分、一番聞きたいことはここだと思います。
でも、教えることはできません!!!
というのは「やり方」がないからです。
私の場合は、検索していて見つけてくださる場合と、知人の紹介の2パターン。
後者は「運」と「タイミング」になってしまうので、本当に何もお伝えできません。
前者は、検索でヒットするように、ヒットして読んでいただいたときに仕事を任せられるレベルの人だとわかるようにしておくことが重要ですよね。
もし私がクライアントだったら(どなたかに頼もうと思ったら)
✔️ ホームページがしっかりしていること(細かいけど独自ドメインであること)
✔️ 内容が更新されていること
✔️ 内容が専門的であること
✔️ 経験が書かれていること
✔️ 問い合わせたらすぐにお返事いただけること
という点をチェックします。
なので、まずはここを整えておいた方がいいかなと思います。
要は、あなたがプロかどうか、です。
見られる部分は気を抜かないようにしましょう!
案件をいただいたら
今回は「ブレンド」という点でお話しします。
クライアントさんはあなたに香りを作っていただきたいと思っています。
あなたは、クライアントさんの望む香りを作って差し上げなくてはなりません。
①自由はあるのか?
まず、あなたにどれだけ自由が与えられているのか、確認しましょう。
クライアントさんは2種類いらっしゃいます。
1)「あなた」に完全におまかせして、とにかくいいかおりをつくってもらいたい
2)先方でイメージやマーケティングなど結構決まっていて、それに沿って香りをつくってもらいたい
1)と2)がパックリふたつに分かれているわけではなく、【90%おまかせ】から【30%くらい自由に作って】というグラデーションになるかと思います。
まったく知らないクライアントさんから100%おまかせはなかなか難しいですし、全部お任せしますとおっしゃっていても、ヒアリングするといろいろこだわりは持っておられるのです。
また、自由度が少なすぎる場合は、おそらく個人に調香をお願いせず、OEMの調香師(社内調香師)に頼むことがほとんどなので、ある程度は自由がある場合がほとんどだと思います。
いずれにしても、自由度が90%か30%でできることは全然違いますので、確認しておきましょう!
②テーマ・コンセプトを聞こう
前回と一緒で、まずはお題を決めるところから。
クライアントさんから「こういう感じ」とテーマをいただくこともありますし、私からご提案することもあります。
ここは1ワードで、でしたよね。
おそらく最初のコンタクトの時点で「こういう香りを作って欲しい」というご依頼メールなどをいただくと思うので、それが出発点となります。
新商品なのか、期間限定発売なのか、ノベルティなのか、イベント会場の香りなのか。
どんな場所で、どんな商品で使うのか、なども最初の段階でお話があるかもしれません。
なければヒアリングのときに忘れずに聞きましょう。
③ヒアリングでイメージを徹底シェア!
ひとことテーマから連想ゲームするんでしたよね。
クライアントさんがいる場合は、ここがヒアリングになります。
クライアントさん(依頼主)と、イメージをすり合わせないとご満足いただけなくなります。
なので、ヒアリングは念入りに!!!
私は、クライアントさんにいろいろしゃべっていただき、出てきた単語をメモします。
色に例えてもらったり、季節を聞いたり、イメージ写真をもらったり。
依頼主の頭の中のイメージと、私のイメージが違うことの方が多いので、共通のビジュアルとことばでシェアしていくのです。
もうすでにその方のブランドが確立している場合は、ホームページで世界観を見ると、だいたい基軸がわかるかと思います。
②で触れた「その香りがどういう用途で使われるのか」は必ずチェックしておいてくださいね。
ターゲット層や、ブランドイメージなども事細かに聞いておきましょう。
④完成形を思い描く
これも自分ひとりで香りを作る場合と一緒。
クライアントさんの案件の場合は例えば「売っている姿」を想像します。
どんなパッケージでどんなプレゼンテーションで売られているのか、手に取る人はどんな人なのか、どんなシチュエーションで香りをつけるのか、など。
もちろん香りの完成形もイメージします。
匂いはしないけど「こんな香り」が結構正確に思い描けたらOK!
いつも香りとヴィジュアルが交差するようなイメージを思い描きます。
これは、完成した香りを人に説明するときのストーリーとなっていきます。
そしてこれをクライアントさんと必ずシェアして、OKをもらっておいてくださいね。
私の場合は、ご依頼を受けたらそのブランドをリサーチします。
ホームページやSNSで使われている写真、説明文のことばのチョイス、コンセプトカラー、取り扱いショップの場所など。
これは私が作る香りが直接商品化しない場合も(イベントの香りになるとか)細かくチェックします。
ある程度イメージがあると、ヒアリングのときにイメージをシェアしやすくなります。
現行の商品をリニューアルして新しいものを作るときでも「現行商品の〇〇を△△に変更します」という部分と「同じです」という部分があるので、話しやすいんですよね。
ちなみに私がパリに住んでいることもあり、ミーティングは香りであってもオンラインでやります。
だからことばやヴィジュアルがすごく重要なんですよね。
一度も実際にお会いしなかった案件もありますし、お会いしたときに香りを嗅いでもらわなかった(まだ作る前)パターンもありました。
オンラインでも仕事はできると思っています。
⑤精油をチョイスする
「ラベンダーを入れる」というしばりがあったとしても、それ以外は自由ですよね。
ヒアリングした際の共通のストーリーの通りに、あなたの解釈で精油を選んでいくのです。
それはクライアントさんも同意しているわけですから、「これでいいですか?」なんて聞かなくていいのです。
⑥精油の配合を決める
どの精油をどれくらい入れるのか、はムエットで嗅ぎながら考えるんでしたよね。
ストーリーに従って、あなたのクリエイションを最大限に発揮してください。
⑦クライアントさんに確認して完成
さきほども言ったように、私はオンラインでお仕事をすることが多いので、最後の確認作業(=サンプル送付)は慎重にやります。
まず、時間がある場合はサンプル数は2本でどちらか選んでいただく。
選んだ1本が思い通りなら、それでOK。
近いけど、もう少し改良して欲しいというご希望だったら、それを軸に変更します。
次に時間があまりない場合は、サンプルは5本くらい用意する。
選んだ1本が思い通りならそれでOK。
近いけど、もう少し改良して欲しいというご希望だったら、それを軸に変更します。
でも、この5本、すべて何がどう違うのか書面での説明もして送ります。
おそらくクライアントさんは香料のプロではないので、たくさんあると選べません。
少なければ少ないほど迷わなくていいのですが、「どっちも違う」も起こりうるんです。
あちらのイメージとのすり合わせをどんなにやっても、100%一緒になることはありませんから。
時間がある場合は、【2種類から選んでそれを改良】を何往復かします。
(ただ、私はこの何往復もの確認は日本で会ってやることはほぼできないので、基本的にはサンプルを5本ほど送っちゃいます)
時間がない、あるいは私のように遠隔でやっている場合は、サンプル5本に説明をつけます。
例えば①と②と何がどう違うのか、ことばにしておくのです。
①と②を嗅いで、ベルガモットがスウィートオレンジに代わったな、とわかる人はプロだけです。
だから「苦味のある柑橘から甘みのある柑橘に変えたので、第一印象が違います」くらいの解説はあった方がいいでしょう。
ことばがあると違いがよりクッキリして、シェアしているストーリーに照らし合わせて「ビター」な方がいいのか「甘い」方がいいのかを詰められます。
こだわりが強いクライアントさんだと完成に至るまでに時間がかかるかもしれませんが、会社はプロジェクトに予算と期限をつけているので、ダラダラと決まらないことはないと思います。
香りよりも重要なことは…
ここで私の経験を。
昔、フランス人調香師と日本人プロデューサーの間に入ったことがあります。
プロデューサーが「こういう香りを作って」と調香師に頼んで、サンプルがあがってきたところ全然イメージと違ったんですね。
ということで、エバリュエーターのように、間に入りました。
「日本の神社」というイメージを香りにしたい場合
(本当は違いましたが、仮にこのテーマで話します)
調香師は自分がイメージする「日本」「神社」でやってみます。
でも、日本にも行ったことがなければ「日本の神社」なんて難しすぎる!
日本人の方は香りのプロではないので、サンプルを嗅いでも「この香り、ちょっと違うんです」としかいえない。
「もっと日本っぽく」って言ってもフランス人にはわかりませんからね。
そこで、私はサンプルを嗅いで、プロデューサーが「もっと日本っぽく」「もっとさわやかに」ということばを香料に置き換えていきました。
日本なら湿気があるから、樹木の精油はこれじゃなくて、こちらを。
日本人は軽やかな香りを好むので、ミドルノートはこの精油じゃなくてこっち系を。
という感じです。
この案件は私が入ったことで香りのサンプルのやりとりも少なくOKがでました。
香りを作る人がクライアントさんとの間でこの作業をやらないと、サンプルはことごとく「これじゃないんです」「ちょっと違うの」と却下され続けてしまいます。
ひとりは「香り」で話すけど、もうひとりは「ヴィジュアル」で話している。
外国語なので、翻訳しないと通じないんですね。
日本人同士だとしても、クライアントさんは「香り」で話す術をしりません。
だから、ヴィジュアルをきっちりシェアして、そのヴィジュアルをきちんと香りに翻訳しなければならないんですね。
パチっと翻訳がうまくいくと、案件はうまくいきます。
もし、こういったクライアントさんと仕事をしていきたいときには、香りを上手に作れるだけじゃなくて、香りを上手に伝えられるだけのボキャブラリーと表現力を身につけておくといいと思います!
というわけで、あなたがクライアントさんからのご依頼で香りをつくるときに、ちょっとでも参考になっていたら幸いです。