こんにちは。フランス在住アロマトローグ・自然療法士のTomomiです。
パリにせっかく住んでいるので、私がおすすめするレストラン、カフェ、ミュゼ情報お教えします!
新しさや話題になっているお店というよりは、本当に私が好きな場所だけを個人的趣味で書いております!
パリ旅行の参考にしてくださったら嬉しいです♡
今日はパリのおすすめミュゼをひとつお教えします!
パリのおすすめレストラン Halle aux grainsをご紹介しましたが、そのレストランがある場所が、このPinault Collectionです。
ここはもともと穀物の先物取引所でした
ホームページを見るとBourse de Commerce / Pinault Collectionとあります。
「ブルス・ドゥ・コメルス」と呼ぶ場合も、「ピノー・コレクション」と呼ぶ場合もあるのですが、今回はピノー・コレクションで統一しますね。
ちなみにBourse de Commerceは「株式市場」と訳されます。
この場所はもともと証券取引所だったため、この名で呼ばれているんです。
もともとのもともとは、15世紀にカトリーヌ・ド・メディシスのために建てられた邸宅でしたが、その建物が壊されて、1889年にこのような建築で証券取引所となります。
証券取引所なのですが、ここで行われていたのは「穀物の先物取引」です。
この地区はレアール地区と言い、今はショッピングセンターがあって大きな駅ビルみたいな感じですが(東京で例えると新宿)、1971年まで中央卸売市場があったんです。
お肉やお魚、お野菜の取引がされていたんですね。
パリの胃袋と呼ばれていました。
そんな場所に穀物取引所があったのもうなずけますね。
セーヌ川も近いので、船でたくさんの食物が運ばれてきたのでしょう。
Pinaultさんのコレクション ピノーさんってだあれ?
パリの穀物取引所に、フランソワ・ピノー氏のコレクションを展示するミュゼとして2021年にオープンしたのがPinault Collection。
なかなか先に進めませんが、ピノーさんについてご紹介します。もうちょっとお待ちください。
所有者のフランソワ・ピノー氏は、フランスの億万長者の実業家。
高級ブランドのグループ、ケリング社の創始者です。
ルイ・ヴィトンなどのLVMH社はご存知ですよね?
世界1位の売上高を誇る高級ブランドグループです。
ケリング社は世界2位。
グッチ、イヴ・サンローラン、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタ、ブシュロン、アレキサンダー・マックイーン、ブリオーニ、ユリス・ナルダンなどが傘下に入っています。
そして、オークションハウス、クリスティーズの所有者でもあります。
フランスの長者番付では4位、世界では27位だそうです。
アート面では、世界でもっとも重要な現代美術のコレクターの10人のひとりに必ず名前が上がる人なのです。
余談ですが、ピノー氏のお父さんは農民出身。
お父さんの木材商を継いで、事業をここまで大きくしたんだそうですよ。
収集した作品、どこに置いたらいいの問題
ピノー氏は70年代に結婚した奥様が骨董商の娘だったことから、アートに興味を持つようになります。
その頃から、近現代のアート作品を購入するんですね。
ちなみに、ヨーロッパやアメリカでは、会社の経営者がアート作品を購入するのは当たり前のこと。
資産にもなるし、社会的に成功した人は文化のパトロン的役割を求められるんですね。
欧米の(多分他の国も同様)経営者と話すときにアートの知識がないと、ちょっと置いてけぼり感を味わうことになってしまいます。
で、そうやってたくさんの作品を購入すると「どこに置く?」問題が浮上します。
彼は最初、パリ郊外のセーヌ川に浮かぶセガン島にミュゼを作る計画をしていました。
でも、いろいろ問題があって、工事が遅れます(フランスはいつでも工事は何ヶ月も遅れるんです)。
結局2005年に断念し、ミュゼ計画はヴェネツィアに移ってしまったんですね。
今、グラッシ宮殿にはピノー・コレクションが入っています。いつか行きたい♪
パリのミュゼ計画は10年後の2016年に再浮上。
それが今日ご紹介するBourse de Commerceです。
どんな作品があるの?
ピノーさんの収集した1万点以上の作品は、現在ヴェネツィアのグラッシ宮殿と、パリのBouese de Commerceに展示されています。
もちろんすべてを展示することはできないので、展示替えをしたり、海外に貸し出したりしています。
サイトでコレクションの一部(といっても途方もないページ数でしたが)を見ることができます。
「あの展覧会に出品されてたのはピノーさんの持ち物だったんだ」というものがたくさん。
さすが現代美術の素晴らしい作品をコレクションしてらっしゃいます。
日本からは村上隆、杉本博司、工藤哲己、河原温、関根伸夫などのラインナップ。さすがです。
これだけコレクション作品が多いと、いつ行っても見たことのない作品を見ることができて、美術館訪問が楽しいですね。
パリのBourse de Commerceのミュゼでは、以下の3つの作品がいつも同じ場所(ほぼ常設)にありますので、ご紹介します。
①『HORSE & RIDER』チャールズ・レイ 2014年
ピノーコレクションの入り口に堂々と鎮座するシルバーの騎馬像です。
パリの多くの歴史的建造物の付近には、ルイ14世やアンリ4世などの騎馬銅像が置かれていることが多いのですが、これもそれに倣ってでしょうか。
シルバーのピカピカの騎馬像が私たちを出迎えてくれます。
実はこれは作家本人の彫像なのです。
私たちがよく知っている威厳のあるフランス王の銅像とは違って、現代アメリカ人の作家の騎馬像が現代美術館の目の前で観客の衆目を集めている、というわけです。
②『Others』マウリッツォ・カテラン 2011年
行っていただくとわかるのですが、ピノーコレクションは、入ってすぐに世界との穀物取引をモチーフにしたフレスコ画をぐるりと囲む、巨大ドーム下の吹き抜けの展示室が現れます。
その展示室を囲むように螺旋階段で上階の展示室に行くのですが、ちょうどフレスコ画との境目にハトがいるんですよね。
巨大な美術館にハトが入り込んじゃったのかなと思いきや、これが作品。
ユーモアたっぷりの作品をつくるマウリッツォ・カテラン、またもやってくれました!
52羽のハトの剥製がこちらを見下ろしているのが「作品」なんです。
現代美術って面白いですよね。
私はカテランの作品の大ファンです♡
③『I… I… I…,』ライアン・ガンダー 2019年
これ、見逃さないでください。
私、最初にここを訪れたときに、結局探せないまま帰ってしまったんです。
ヒントは0階のとある壁の足元。
ひょっこりと愛らしい小さなネズミが壁に穴をあけて顔を出しているんです。
「可愛いー♡」と近づくと、これまた可愛い声で一生懸命何か話しています。
実はね、先日訪れたときにあまりにも可愛くて、お子さんらしき女性といらしてた年配の女性がこのネズミに反応して、会話していました。
「そうなの、それは大変だねー」といった具合に。
英語でしゃべっていますので、ぜひネズミちゃんの言い分、聞いてあげてくださいね。
最後に、建築にも触れなければなりません。
ピノー、コレクションの目玉のひとつが建築です。
もともと巨大ドームをいただく、円形の建築物で、中央は吹き抜けで自然光が入る優雅なスペースになっています。
その周りを囲むように小さな展示室がいくつも設けられていて、地下もコンサートや映像作品を見るための展示室がたくさんあります。
結構な数の作品を見ることができるのに、ゆったりと鑑賞できるのは、この空間設計が素晴らしいから。
この建築は、安藤忠雄さんが手掛けています。
ピノーさんのヴェネツィアのミュゼも安藤忠雄氏の建築。
ずっとタッグを組んでいるようですよ。
現代美術といえば、ホワイトキューブ(文字通り四方を白い壁で囲まれた空間)での展示が当たり前ですが、ピノー氏はあえて歴史的建造物にこだわったのだそうです。
歴史的建造物は壊してはいけませんから、上手に再構築して最高の現代美術用の展示室にするためのテクニック、コンセプト、経験を持ち合わせた安藤忠雄氏に全権を委ねているのでしょう。
フランスの歴史遺産と現代のクリエイション、過去と現在、コレクションと来場者の対話が繰り広げられる最高の場所となっています。
地下にはこの建物自体が作られた時のボイラーなども見学することができます。
是非、現代美術の作品だけじゃなくて、エッフェル塔を生んだ19世紀のフランスの近代的歴史的建造物の構造もチェックしてくださいね!