こんにちは。フランス在住アロマコローグのTomomiです。
香りのする映画を見よう
香り好きのみなさーん、今日は映画のお話です!
映画は視聴覚芸術ですが、香りが感じられるほどに強烈な匂いが描かれたこの作品、ご覧になったことがあるでしょうか?
とーっても面白いので、ぜひご覧くださいね。
とはいえ、このブログであらすじを書いてネタバレしてしまうのも困るかと思いますので、ネタバレをせずに、作品をご覧いただいたときにもっと楽しめるようなコネタをご紹介したいと思います。
その映画とは『パフューム ある殺人の物語』
1985 年に出版されたドイツ人小説家パトリック・ジュースキントの小説を映画化したものです。
小説は現在までに 48 の言語に翻訳され、世界中で 2,000 万部以上が販売されていて、現代ドイツ文学でトップクラスの有名小説となっています。ドイツ映画としても最も成功した映画とも言われているんですって。
ネタバレしないあらすじ
驚異的な嗅覚を持って生まれながらも、自分自身の匂いを持たないジャン=バティスト・グルヌイユ(ドイツ語で「カエル」の意)の一生を描いたのがこの映画。
本当に生まれてから死ぬまでのお話です。
18世紀のパリ。魚市場の生臭い場所で産声をあげたグルヌイユは、実は驚異的な嗅覚の持ち主。
母親から捨てられた乳児は、いろいろな人の手に渡り、大人になります。
パリのシャンジュ橋のふもとに住んでいる調香師のもとで働きます。
師匠の実力をはるかに超える才能を発揮し、師匠はライバルを出し抜いて香水で巨額の富を得ます。
グルヌイユはどうしても「アンフルラージュ(冷浸法)」を学びたかった。
念願かなって1756 年の春、グルヌイユはパリを出てグラースへ向かい、アンフルラージュを駆使して、すべての人を愛で満たす夢のような香水を作り上げるのです!
そして、パリに戻り、自分が生まれた場所で一生を終えます。
どうでしょうか。
あれ、なんだか調香師を目指す青年の成功物語みたいですよね。面白くなさそう?
殺される人数は20人くらいいるのではないでしょうか。
やたらめったら殺されるのも、18世紀に一般市民にはあまり人権がなかったのかもしれません。
誰が誰になぜ殺されるのか、これがとーっても面白いのでぜひご覧ください。
香水好きさんのみどころ
香りがテーマになっているので、どこを切り取っても興味深い。
でもしいて言えば、この5つのポイントに注目してください!
1 画面から漂う香り
本当に香りがするのではと思うくらいに、香り描写が素晴らしいと思います。
生臭い魚屋さんで産声をするグルヌイユですが、そのシーンは思わず鼻をつまんで眉を潜めてしまうほど。
あちこちのシーンに香りが感じられる描写があるので、存分に「香りを嗅いで」くださいね!
2 革なめし業と調香師
グルヌイユの職歴は革なめし業と調香師。これ、深い関係があります。
昔は動物の「皮」を衣料の材料として使う「革」になめすのに、この職業の人はもちろん、その革を身に付けるのですら臭かったのです。獣臭がしたと言われています。
だから、その匂いをマスキングするために「香水」が生まれました。
グルヌイユはどちらの職業も経験しているんですね。
3 香水の街グラース!
南仏のカンヌから北へ来るまで40分ほどの街がグラース。
ここはかつて、香料生産のメッカとして栄えました!
今はほとんどの香料会社が引っ越しし、芳香植物が育てられた畑が消えてしまい、昔ほどの面影はありません。
グルヌイユは最高の香水を作るためにグラースに向かうんですね!そのシーンもご覧ください。
4 アンフルラージュ(冷浸法)
私たちがよく知っているラベンダーなどのエッセンシャルオイル(精油)は、水蒸気を使った蒸留で採ります。
でも、これだとお花の繊細な香りが取り出せません。
1930年くらいまでグラースでは行われていましたが、今はやっていません。
代わりに香水博物館で使用する器具などを見ることができます。油脂に花びらを乗せて香りを移すんですね。
これが人々を恐怖に陥れる物語のキーワードとなります!
5 香りは人々の感情を揺さぶる
いまだに謎めいているクライマックスのシーン。
私は最初観ながら「えええ?なんで?なんで?」と混乱しましたが、何回か観るうちに「なるほどー」と納得。
グルヌイユが作り出した最高の香水を嗅いだ人たちの豹変ぶりが見どころです。
「香りには、言葉、外見、感情、意志よりも強い説得力があります。香りの説得力は反発することができず、私たちが肺に吸い込む空気のように私たちに入り込み、私たちを満たし、私たちを完全に満たします、それに対する治療法はありません。」
パトリック・ジュースキント 原作者のことば
マニアックな雑学
いくつか、パリや香水が好きな人のために、超マニアックなお話も3つしておきますね。
- グルヌイユが生まれたのは、18世紀のパリ。
レ・アール(日本でいうところの新宿のような場所。当時は食品の卸売市場があったところです)の墓地で産声を上げました。
現在、駅地下ショッピングセンターがあり、そのすぐ横に広場があります。
これが彼が生まれ、彼が死んだ場所。
イノサン広場とイノサン噴水が今も残されています!(現在工事中)
小説の架空の人物ですが、設定となっている場所は正確なんですね!
巡礼地としてどうぞ! ついでに言うと、今のパリは18世紀の面影がないので、魚市場のシーンのロケはスペインだったそうです。 - ジャン=バティスト・グルヌイユという主人公の名前は、1879年に高級香水ハウスをオープンしたときに 名前をグルノヴィルに変更したフランスの調香師ポール・グルヌイユの名前を思い出させます。
グルヌイユはフランス語でも「蛙」ですが、彼の一生にぴったりの名字だと私は思います! - グラースでとても重要な人物として登場するのがアントワーヌ・リッチスAntoine Richisさん。
いやー、これ、どう考えても香料会社のアントワーヌ・シリス社Antoine ChirisのCとRを反対にしてます。
気になって仕方ありませんでした。
私はまだ小説を読んでいませんが、小説はかなり研究がなされていて彼らによる分析がまた興味深いのです。
いろいろな人が殺されるのですが、これもふわっと消えていく「香水」的だという指摘もあり、なるほどー!と思ったり。
今度小説も読んでみたいと思います。
ご興味あったらぜひ、映画も小説もご覧ください♡