アートのない世界には生きられないフランス人
Il y a quelque chose d’important dans le vie, c’est l’art.(人生で大切なこと。それはアートだ)
Pierre Soulages ピエール・スーラージュ
2020年12月末、未曾有のパンデミックでフランス政府はミュゼ、映画館、劇場の閉鎖を決定しました。
それは状況的に仕方ないにしても、「表現の自由とアイデアの自由な伝達、芸術的創作の自由」、さらには「文化的作品へのアクセスの自由」などの基本的自由に対する重大な攻撃であると新聞は報じています。
あのとき、ニュースでも「私たちからアートを奪わないで!」「アートのない人生なんて辛すぎる!」などなど、フランス人が連日訴えていましたっけ。
それほどまでに、アートはフランス人にとって、ワインとバゲットみたいに生活に密着したものなのです。
確かに、フランス人と話していてもアートな話題が多いです。
西洋美術史の有名アーティストや有名作品の名前なんかが、バンバン日常会話に出てきます。
それは、美術教育を特別受けているわけではないフツーの人も。
今のお話、あなたはどう受け止めましたか?
「あ、フランス人ね。やっぱりそうなんだー。日本とは違うね。」
「はいはい。フランスはフランス。私たち日本人にはアートは別に必要ないし。」
そんなふうに感じませんでしたか?
アートって美術だけじゃないんです
アートというと、きっと美術館に飾られている絵画や彫刻のイメージを思い浮かべるかもしれません。
フランス人は実際に、「美術」に関しても深い造詣のある人ばかりです。
でもアート=「美術」としてしまうと、フランス人だって本当に好きな人は少ない、小さな業界です。(日本よりは大きいですけれど)
そして「美術」としてしまうと、敷居が高く、知らないと意見を言ってはいけないような閉鎖的な雰囲気がありますよね。
わかります。
でも、ここで言うアートというのは、美術だけではなくて、写真、映画、音楽、ダンス、演劇、ファッション、ありとあらゆる文化的なものを指すとしたら、あなたは無関係、無関心でいられるでしょうか?
お好きなお洋服のブランド、ありませんか?
推しの俳優さん、いらっしゃいませんか?
たまにコンサートに行ったり、映画を見に行ったりしませんか?
写真を撮るのはお好きですか?
きっと、アートが身近になったのではないでしょうか。
では、その「あなたの好きなアート」について
- なぜ好きなのか?
- どこに惹かれるのか?
- どういう理由でどんなふうに感情が動かされるのか?
を、そう思っていない人に説明できるでしょうか?
「好きだから」「好きに理由はないもん」
という声が聞こえてきそうですが、そのアートが好き嫌いを超えた「文化」として世に広がっているのは、やっぱりちゃんとした理由があるんですよね。
社会的な存在理由と、私がそれを好きな理由。
これを知ることが、自分を知ることに繋がるんです。
これを言えることが、【凛としたオトナ】だと思うのです。
何が好きなのか?何が嫌いなのか?
フランス人は、自分の好きなジャンル、アーティスト、作品、テイストが非常にはっきりしています。
はっきりしているということは、それだけ「見ている」「聴いている」「知っている」わけです。
好き嫌いを超えた社会的、文化的存在理由も鑑みて、なぜ好きなのかをきちんと説明できるんですよ。
そもそも、自分のことをちゃんと理解しているから、自分の好き嫌いがわかっているといえます。
とはいえ、嫌いなものを食わず嫌いで避けたりはしません。
なぜ嫌いなのか、もきちんと理解しようとして、とりあえず何でも体験してみるのです。
「生理的に嫌い」「理由はないけど嫌い」では、こどもと同じなんですよね。
社会では認められている作品にもかかわらず、自分が嫌いである理由をきちんと説得できるのがオトナです。
フランス人が集まるパーティに行くと大変です!
誰かが最近のアートの話をすると、「私は好き」「いや、あれは最悪だ」「あなたはどう思う?」と議論が始まる。
ここに参加しなければ、フランス人と同等にみなされません。
とにかく、私の意見をなんとかして述べなければ!
日本と違うなーと思うのは、意見の違いを大歓迎すること。
「この良さがわからない人とはしゃべっても気が合わない」と排除して、仲良しの結束を強めることはしません。
「あなたはそう思わないかもしれないけど、これはこういう背景があって、こういう感動があって、こういう意味があるから好きなの!」と、その良さがわからない人に一生懸命説得します。
逆にそれが嫌いだという人の意見も一生懸命聞くんです。
いろいろな見方があるんだな。世界は面白いな、もっといろいろ知りたいな、と思うことが大切。
だって、この世は意見の合わない人とも共存していかなくてはなりませんものね。
アートは世界の共通言語
気づきましたか?
アートが大事、というよりも、アートという共通言語で自己表現しているって感じ。
私はこういうものが好きで、こういうものに囲まれていると幸せを感じる、そんな人間なんです!って。
そして自分とは真逆の人に対して「どうしてそれが好きなの?」と、話しかけることで対話が生まれる。
アートって、自己表現とコミュニケーションのツールなんですね。
これはフランスに限ったことではなくて、多くの国の人との共通言語だと思っています。
あなたと私が違うのは当たり前。
違いがあるから人生って刺激的で楽しいのです。
あなたはどんなアートが好きですか?それはなぜですか?
あなたにもこの質問、しっかり答えられるようになっていただきたいなと思います。
あなたは世界の人と楽しくコミュニケーションできる「共通言語」をお持ちですか?
もし答えるだけの力を持っていないのなら、ぜひ手にして欲しいアイテムです。
あれば人生が豊かになるから!実証済みです!
アートの基礎知識もあった方がいいのですが、それよりもアートを感じる感受性、感じたことを言語化する能力がまず必要。
例えば、真っ白な大きなキャンバスがミュゼに展示されているとします。
それを見て、あなたはどう感じますか?どう思いますか?
それを相手に伝わることばにしてみましょう。
「なんで何も描いてない真っ白なキャンバスが展示作品なんだろう?」
「誰が認めたの?アーティストは何を言いたかったの?これでいくらするの?」
とあなたが思ったとしたら、隣の人は違うことを思っているかもしれません。
相手は同じものを見て、どう感じるのだろう?どう思っているのだろう?
聞いてみたくありませんか?
そうやって、アートを通して自分の思っていることを相手に伝え、相手の思っていることを自分と比較する。
すると、新しい世界がどんどん広がっていきます。
知性と感性を磨きながら、自分らしさを他の人が認めてくれる。
人生がどんどん楽しくなる。
それを実現してくれるのがアートなのです。
そもそもなんでアートを語らなければならないかって?
すみません。
好き嫌い、意見の違いだったら、食べ物でも、住む場所でも、仕事内容でも、アロマでも同じように語れますよね。
なぜ「アート」について語れないといけないのか、を説明し忘れていました。
アートってちょうどいい距離感なんです。
- 一部の専門家を除いて、超詳しい人が少ない。(誰でも)
- だいたいの作品が目で見て、一瞬で把握できる。(すぐに)
- 大昔からその価値が歴史的に保証されている。(ちゃんとした対象について)
- へんてこな作品がいっぱいある。(よくわからないけれど)
- 生活必需品ではない。(誰も傷つけずに話せる)
要は、人類の歴史を形づくってきたものなので価値があるという前提がありつつも、誰もが簡単に見ることができて、好きなように語ることができる。
生活に密着してないからこそ、必死に語る必要もなく、見た目が???なものが多いから、意見がわかれやすいんですよね。
どんな人も何かしら語ることができて、違う意見であっても誰も傷つかないわけです。
これが政治や宗教の話だと、大バトルになります。
だから欧米人と話すときは政治と宗教について話しちゃダメって、よく言われますよね?
自分ごとすぎて、他人の意見を受け入れられず、白熱して人を傷つける恐れがあるんですよね。
また抽象的すぎて、語るには覚悟が必要なのです。
フランスなんかはいろいろな国の出身の人も多く、世代や人種を超えて交流する必要があるため、「アート」が一番扱いやすいテーマだったりします。
ピカソが好きか嫌いかのバトルになっても、誰もが参加できる上に、意見の違いから傷ついたり、絶交したりしないですよね?
「ピカソのよさがわからない奴とは金輪際付き合わん!」とはならないわけです(笑)。
そして、好き嫌いを超えたところに、きちんと美術史家たちが形作った「価値」という模範回答が一応あるのも安心ポイントですよね。
美術史というバックグラウンドがあることで「ちょっと知的な話をしている」という優越感?もあります。
少しはアートを語ろうって思い始めてきたでしょうか?
アートの見方、アートの言語化はコツが必要
アートを見る目、アートの言語化は残念ながら、誰もがすぐにできるものではありません。
アートの文脈を無視して、好き勝手に自分の意見を言えばいいわけではないのです。
やっぱりそれがアートとして認められている事実を知ってこそ、「好き」「嫌い」の根拠でさえも、あなたらしさがでてくるのです。
それが、あなたの知性であり感性となっていきます。
知性と感性を磨くためのアート鑑賞にはちょっとしたコツと慣れが必要。
私は美術の専門教育をいくつかの学校で受けており、美術業界で働いていました。
フランスに来てからの20年も、アートの授業を受講し、ミュゼに通い、アートな話をするフランス人に揉まれてきました。
それを踏まえて、知性と感性を磨き、自分らしさを見つけるフランス流アート鑑賞法を生み出したのです。
そんな知性と感性のアート鑑賞法は、毎月1回、ライブ配信というかたちで実践することができます。
オンラインサロンArt & Bloomでは、ご自身が言語化に慣れていただけるようにと、ライブ配信の前後にアウトプットワークを設けています。
これまで、クロード・モネ、アントワーヌ・ワトー、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、サンドロ・ボッティチェルリ、エドゥアール・マネ、ギュスターヴ・カイユボットなどを扱ってきました。
これらの作品を見て、アウトプットワークで言語化するというカリキュラムです。
毎月、じっくりと作品に向き合う時間をとって、ご自身を見つめ、感じたことを言語化してみましょう。
その他、単科コースとしてアート鑑賞の助けになるような西洋美術史のテーマをとりあげて解説している動画もご用意しています。
アートの基礎知識を学ぶことが目的ではありません。
すべては、アートを通して人生を豊かにすることを目標にしています。
あなたがフランス女性のように自信に満ちて、人生を楽しめるようになりたいと思ったら、ぜひアートの扉を開いてみてください。
自分は何者なのか?がだんだんとわかるようになり、自分のことを自信を持って主張できるようになります。
他人と比較していつも言いたいことが言えない人生を卒業しましょう!
フランス流ポジティブエイジングのためのアート鑑賞法をパリからお届けします!
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